【今月の言葉】
今月の言葉は皆さんよくご承知の、懴悔偈の1節です。「我昔所造諸悪業(がしゃくしょぞうしょあくごう) 皆由無始貪瞋痴(かいゆむしとんじんち) 従身語意之所生
(じゅうしんごいししょしょう) 一切我今皆懺悔(いっさいがこんかいさんげ)」ですね。
先日お月参りの際。
「和尚 大谷さんの通訳水原一平えらいことしましたなあ。懴悔文読んで聞かしてやらなあかんな。」という話が出ました。
水原一平はドジャース・大谷翔平の銀行口座から1600万ドル(約24億6000万円)の不正送金が行われた問題で、アメリカの捜査当局は現地時間の4月11日、元通訳だった水原一平容疑者を銀行詐欺罪で訴追したと発表した。起訴状などから水原容疑者は嘘に嘘を重ねてきたことが明らかになり、多くの人が衝撃を受けた。(デイリー新潮)
「私が今だけでなく遠い昔から造ってきた悪い行為はすべて何時はじまったとも知れない昔からの貪欲(よくばり)と瞋恚(はらたて)と愚痴(ものの道理を分からない愚かさ)によるもので、身(からだ)と語(ことば)と意(こころ)より生じたものです。その一切を含み仏の前に告白し悔い改めます。」
水原氏は、貪欲(お金に対する欲望)綺語(偽りの言葉)両舌(二枚舌)妄語(うそいつわりの言葉)偸盗(盗みを働くこと)という戒を破り信頼を失いました。もし仏教的生活をし、日々懴悔をしていればもっと早く心休まることが出来たでしょう。
身体で行わず、言葉に出さず、ただ心に思うだけなら、法律的、道徳的の罪とはなりませんが、すべての罪の根元は心であるとして、心に思う罪を最も重く見るのが宗教の立場です。
罪とは包み隠すことと言われますが、すべてをお見通しのみ仏さまの前に出ますと、あまりにも罪深い我が身が恥じられてきます。あたかも全然ほこりのないと思われる
薄暗い部屋の中でも、一筋の光が差し込むと、おびただしい塵ほこりが目に見えるようなものです。そこで心から懺悔し、罪を悔い改めるのです。
浄土宗では、「念々称名常懺悔」と言って、常にお念仏を申すことにより懺悔が全うされます。懴悔の最上の方法は常にお念仏を称えることです。
十悪懴悔
「十悪懴悔」は、仏教において悪業を懺悔する際に用いられる教えです。
十悪仏教で説かれる悪行のことで、「悪因悪果」と教えられるように、悪業が苦しみを生み出す行いであるとされています。具体的には以下の十つの悪行が含まれます1:
①貪欲(物欲に取り憑かれること)②瞋恚(怒りや憎しみ)
③愚痴(愚痴を言うこと)④綺語(偽りの言葉)
⑤両舌(人をそり立てる言葉、二枚舌)⑥悪口(他人を中傷する言葉)
⑦妄語(虚偽の言葉)⑧殺生(生命を奪うこと)
⑨偸盗(盗みを働くこと)⑩邪淫(不正な性行為)
懺悔とは
自らの罪を告白し、心から悔い改めることです。仏教では、教団において罪を犯した者が他の信者の前で罪を認め、告白することでその罪が許されるとされています。懺悔は正直に行われ、ありのままの罪を認めることで成立します。
この「十悪懴悔」は、自己の行いを省み、悪業から抜け出すために仏を勧請し、善根を回向して極楽浄土に往生することを願う教えです。
『観無量寿経』の経文の中にも、「お念仏は…中略…八十億劫生死の罪を除く」とはっきり示されています。